つみかさね

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山彦乙女

山彦乙女
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書名:山彦乙女
著者:山本 周五郎
発行所:新潮社
頁数:234ページ
発売日:
定価:128円 Kindle

徳川吉綱の御代、甲州武田家の再興を130余年にわたる悲願に翻弄された甲州甘利郷のみどう一族。江戸の新御番、安倍半之助は甲府勤番中に失踪した叔父の遺品を調べるうち、叔父を狂気へと導いた武田家の莫大な遺産をめぐる「かんば沢」の妖しい謎のとりことなり、己れもまた甲州へと出奔してゆく。
何となく行き当たりばったりの作品で武田家の再興話もひとつのアドバルーンに過ぎない。何となく駄作、
「著者の郷里甲州雄大な自然を舞台に謳いあげた、周五郎文学に特異な位置を占める怪奇幻想の大ロマン。」とあるようにこの作品を紹介する文章も何となく引いている。この230ページ足らずの本ですが、読むのに時間が凄く掛かった。少しも本の中に入っていけない。直ぐに眠くなってしまう。1週間以上掛かってようやく読んだ。

本書より
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人間はいかに多くの経験をし、その経験を積みあげても、それで自分を肯定したり、満足することはできない。 ――現在ある状態のなかで、自分の望ましい生きかたをし、そのなかに意義をみいだしてゆく、というほかに生きかたはない。

「これから五百年、千年のちにも」半之助は続けた、「また誰かが、此処へ来て、同じように、あの山を眺めるだろうか」 「ええ、たぶん……」 花世は小さな欠伸をした。

彼は云いたかったのだ。過去も現在も、未来も、人間は生きてきて、悩んだり苦しんだり、愛したり憎んだりしながら、やがて死んでゆき、忘れられてしまう。金石に刻んだ碑銘も、いつかは錆び、欠け朽ちて、この世から消滅してしまう。

武田一族も亡び、信玄の遺した、伝説の石棺とおぼしい、財宝を秘めた伏岩も、崩れ去った。人間の為したこと、為しつつあること、これから為すであろうことは、すべて時間の経過のなかに、かき消されてしまう。

――慥かなのは、自分がいま生きている、ということだ、生きていて、ものを考えたり、悩んだり、苦しんだり、愛しあったりすることができる、ということだ。 こういったようなことを、云いたかったのである。しかし口にはだせなかった。口にだすにはあまりに感傷的だし、また漠然としていた。