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日本の米消費動向の分析(2022年〜2025年)

 

日本の米消費動向の分析(2022年〜2025年):長期的な減少傾向と短期的な価格高騰の影響

1. 長期的な消費傾向と背景

日本の米消費量は、長期的に見て減少傾向が続いています。農林水産省のデータによると、1人当たりの年間消費量は1960年代のピーク時(約118kg)から徐々に減少し、2020年代初頭には約50kg前後まで低下しています。この背景には、食生活の多様化(パンや麺類などの小麦製品へのシフト)、高齢化による摂取量減少、および人口減少が挙げられます。

2. 2022年〜2025年の短期的な消費動向

2022年から2025年の約2年半の期間に焦点を当てると、総消費量は概ね安定しているものの、家庭内消費の減少と非家庭部門(中食・外食)の増加という、異なる動きが見られます。

総主食用米需要量 (万トン) 1人当たり年間消費量 (kg) 主な傾向
2022 約679 約51 長期減少トレンドの中で底打ち感。外食回復で総量は安定。
2023 約674 約50.8 微減。価格本格高騰前で、年度後半に消費持ち直しの兆し。
2024 約679 約51.1 前半微増。夏以降の価格高騰で後半に消費抑制の動き。
2025 (予測) 約670 約50.5 価格高騰の影響が顕著化し、減少に転じると予測。

3. 価格高騰の影響と消費構造の変化

3-1. 米価高騰と代替品へのシフト

2024年夏以降、猛暑による生産減やコスト上昇などにより米価格が高騰し、スーパー平均価格が5kgあたり3,800-4,200円台(2023年比約1.5-2倍)で高止まりしています。この家計への圧迫により、消費者の間で小麦製品(パン、麺類など)への移行が加速し、米の消費減の一部を代替品が補う傾向が見られます。

3-2. 家庭内消費の減少と非家庭部門の安定

価格高騰の影響は、特に家庭内消費に顕著に現れています。2025年に入ると、家庭内精米消費量は前年比で10%前後の大幅な減少が続いています。一方で、全体消費量が安定している主な要因は、以下の非家庭部門の需要増加です。

  • 中食・外食の需要増加: 共働きや単身世帯の増加を背景に、弁当や惣菜などの中食、外食部門の割合が上昇。コロナ禍からの回復もあり、家庭内消費の減少分を相殺しています。
  • インバウンド(訪日外国人)需要の急増: 観光客の回復により、外食・中食での米消費が大幅に増加し、全体需要を押し上げる大きな要因となっています。
  • 業務用・その他の安定需要: 食品加工業、学校給食、病院などの業務用や、増加傾向にある輸出需要も、安定した需要を支えています。

3-3. 消費量と売れ行きの乖離

高価格帯にもかかわらず、2024年から2025年上半期にかけて米の売上は一部で好調でした。これは、高値・品薄感から生じた一時的な「買いだめ」需要が要因と考えられ、実際の家庭内消費量は価格弾力性により減少傾向にあります。

4. 消費量の内訳推移(1人1ヶ月当たり精米消費量)

家庭内消費(全体の約66%)の減少を、中食・外食(全体の約32〜34%)の増加が支える構造が明らかです。

期間 総消費量 (g) 家庭内 (g, 割合) 中食・外食合計 (g, 割合)
2023年 (平均) 4,626 3,088 (66.8%) 1,537 (33.2%)
2024年 (平均) 4,722 3,189 (67.5%) 1,533 (32.5%)
2025年4月 4,611 3,067 (66.5%) 1,544 (33.5%)
2025年6月 4,313 2,886 (66.9%) 1,427 (33.1%)

まとめ

日本全体の米消費量は、長期的減少トレンドの中で、2022年〜2025年においては総需要量(約670-680万トン前後)が比較的安定して推移しています。これは、米価高騰による一般家庭(家庭内)での消費減を、中食・外食、インバウンド、および業務用などの非家庭部門の需要増加が相殺しているためです。しかし、家庭の食費への影響は大きく、将来的には人口減少も相まって全体減少が加速する可能性があります。