つみかさね

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「タイパ至上主義」の現代人が、あえて紙にインクをなすりつける奇妙な儀式について

「タイパ至上主義」の現代人が、あえて紙にインクをなすりつける奇妙な儀式について

現代人はとにかく急いでいる。タイムパフォーマンス(タイパ)を血眼になって追い求め、YouTubeは2倍速で観るし、メールの返信は生成AIに丸投げする。1分1秒を惜しんで効率化の限界に挑んでいるのが、21世紀の知的生命体の姿だ。
それなのに、である。

世間を見渡すと、あえて時間をドブに捨てるかのような「非効率の極み」に大金を投じる人々が急増しているという。子供をわざわざ「書道教室」に通わせ、大人はデジタル端末を閉じて「手帳」や「ジャーナリング(日記)」にカリカリとペンを走らせているのだ。

タイパの神様が激怒しそうなこの逆流現象。一体、私たちの脳内で何が起きているのだろうか。

 デジタルですべてを失った人類、ついに「手の震え」を愛し始める
記事によると、この「あえて手書き」がウケている最大の理由は、脳へのプラス効果らしい。キーボードを叩く、あるいは画面をタップするという行為は、脳にとっては「単一の地味な作業」に過ぎない。一方で、ペンを握って紙に文字を書く行為は、指先の複雑な動き、紙の抵抗、インクの匂い、視覚的なフィードバックなど、脳のあらゆるエリアをフル稼働させる「超高級スパ」のようなものなのだとか。
つまり、私たちは効率化を極めた結果、脳をすっかり退化させてしまい、慌てて「指先のリハビリ」を始めているわけだ。
特に笑ってしまうのが、大人の間で流行している「ジャーナリング(頭に浮かんだことをひたすら紙に書き出す作業)」や、こだわりの高級手帳だ。

Googleカレンダーを使えば0.5秒で済む予定入力を、わざわざお気に入りの万年筆を取り出し、インクの出具合を確かめ、お洒落な海外製の手帳に「13:00 ミーティング」と書き込む。間違えたら修正テープで汚くなるリスクを背負いながら。
デジタルの文字には「感情」が載らない。しかし、手書きの文字にはその時の体調や焦り、イライラがそのまま「字の乱れ」として物質化する。
現代人は、スマホの冷徹なフォントに心が削られた結果、「自分の書いた汚い字や、ちょっと歪んだ線」に人間味を感じて癒やされるという、なんとも倒錯した領域に達してしまったのである。

 「書道教室」という、コスパ最悪の究極の贅沢
子供たちの間で書道教室が人気を再燃させているというのも、なかなかに皮肉な話だ。
今の子供たちは、生まれた瞬間からタブレットを操作し、学校の宿題もデジタル端末で提出するデジタルネイティブである。フリック入力の速度なら大人を凌駕する彼らが、わざわざ墨汁で服を黒く汚しながら、1本の毛筆をコントロールするために息を止めている。
タイパやコスパの観点から言えば、書道ほど最悪なものはない。

1. 墨を擦る(時間がかかる)
2. 一筆書きで修正不可能(やり直しがきかない)
3. 乾くまで片付けられない(場所をとる)

しかし、この「やり直しがきかない恐怖」と「圧倒的なスローペース」こそが、画面の通知に1秒ごとに脳をハイジャックされている現代の子供たちにとって、唯一の「デジタル・デトックス」の聖域になっているという。
親たちは「うちの子、スマホばかり見て集中力がなくて……」と嘆き、高い月謝を払って「強制的に時間を無駄にさせる環境」を買い与えている。効率化のためにスマホを買って与え、そのスマホから守るために書道教室へ行かせる。なんという美しいマッチポンプだろう。

 ポジティブに締める、私たちの「愛すべき無駄」
私たちはこれまで、「速いことは良いことだ」と信じて、あらゆるものを電子の海へと沈めてきた。その結果、手に入れたのは「時短」ではなく、「浮いた時間でさらに別のタスクを詰め込む」という、終わりのない労働ラットレースだった。
そう考えると、ノートにペンで文字を書いている時間だけは、私たちが資本主義の猛スピードから合法的に脱走できる、唯一の「サボり時間」なのかもしれない。
もしあなたの周りに、分厚い手帳にシールを貼りながらお気に入りのペンで日記を書いている人がいたら、どうか「それ、Notion(メモアプリ)でやれば一瞬だよ?」などと野暮なことを言ってはいけない。
彼らは今、脳の細胞をパチパチと目覚めさせ、デジタル社会に奪われた「人間らしさ」を1文字1文字、必死にすくい上げている最中なのだから。

あえて「手書き」、非効率だけど脳にはプラス? ◇子ども書道教室、手帳・ジャーナリング人気を探る
https://edu-naigai.jiji.com/article/3241

「タイパ至上主義」の現代人が、あえて紙にインクをなすりつける奇妙な儀式について

「タイパ至上主義」の現代人が、あえて紙にインクをなすりつける奇妙な儀式について