つみかさね

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山本周五郎 作品集 五 Kindle版「鵜」「女は同じ物語」「しゅるしゅる」

山本周五郎 作品集 五 Kindle版「鵜」「女は同じ物語」「しゅるしゅる」
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書名:山本周五郎 作品集 五 Kindle版「鵜」「女は同じ物語」「しゅるしゅる」
著者:山本 周五郎
発行所:
頁数:96ページ
発売日:
定価:110円 Kindle

「鵜」
江戸で謹慎の身となった布施半三郎は国詰めとなった。半三郎は江戸から持ち帰った釣り竿を抱え、毎日近くの加能川へ鮠(はや)だとかウグイ、鮎を釣りに出かけていた。ある日、断崖の下にある釣り場を見つけた。そこへ毎日通っていると、ある日上流から裸の女が流れてきた。

死体だと思ったが、その女は生きていて岩の上に登った。半三郎は、その女の美しさに驚き誤って釣り竿を川へ落としてしまった。そして逃げ帰ってしまう。しばらくして、また、その釣り場へ行ってみると、なんとその女がまた現れ、釣り竿を拾ってくれていた。その後しばらく二人はそこで秘密の逢瀬を重ねることになります。しかし、突然女は来なくなってしまった。こんなストーリーの話はファンタジー小説とでも言うのでしょう。


「女は同じ物語」
武家の町人の若い男女の恋愛話です。二千三百石の城代家老の梶竜右衛門の一人息子広一郎には許嫁の安永すねという娘がいた。広一郎は幼い時に“つね”と一緒に遊んでいる時、さんざん意地悪をされたのがトラウマになり全くの女嫌いになっていた。

ある日、母さわが広一郎の侍女として紀伊という女を召使にさせた。毎日一緒に過ごしているうちに、やがて広一郎は紀伊に好意を抱き始める。紀伊も広一郎を好んで結婚の約束までした。

しかし突然、紀伊は広一郎の前から姿を消してしまった。失意のもとに広一郎は許嫁の“つね”と祝言を挙げることになったのだが、その日現れた女は紀伊そのものだった。“つね”は広一郎の女嫌いを直そうと広一郎の母と相談し紀伊の名を語り広一郎の女に対する苦手意識を取り払ったのでした。

「しゅるしゅる」
若き城代家老の由良万之助は次席家老の片桐五左衛門から、作法教授の尾上女史の教え方が厳しすぎるので、少し手加減するように伝えよと頼まれる。

万之助はそれ良いだすのを躊躇していたが、尾上女史の男勝りな性格が癇に障り、舟遊びを口実に激流の中に誘い出した。泣き言を言わせようと企んだが予想もしない激流に二人はおののき必死に脱出を図る。この激流に押し潰される舟上の二人の描写は気象状況に狼狽える人間たちの恐怖する姿を実に上手に書いている。舟から放り出された二人はしっかり抱き合ったまま砂地で伸びていた。「あんな姿を皆に見られたのだから夫婦になるしかないだろう」最高のセリフで締めくくってあります。

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時代小説の名手、山本周五郎が描いた人情話の傑作集。貧しさや虐げられた者たちが愛、悲しみ、怒り、慈しみ、恨み、嫉妬、義理などさまざまな感情を抱え、必死で生きていく姿に思わず胸が熱くなる。人生の喜怒哀楽を知り尽くした作家が描く庶民の生活。第五巻は「鵜」「女は同じ物語」「しゅるしゅる」の三本を収録